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プロフィール

西山 雄大

Yuta NISHIYAMA

職名
准教授
学位
博士(理学)
所属
工学部 情報・経営システム系 応用情報学講座
主な授業担当科目
ヒューマンインタフェース工学(学部3年)、統計工学(学部3年)、理論生命科学(大学院)、情報・経営英語(大学院・分担)
研究分野
生命システム、内部観測、認知科学、動物行動学
研究テーマ
多感覚システム、群れ、創発計算、適応能、自己組織化
研究業績等

reseachmap

所属学会
計測自動制御学会、日本動物行動学会、日本神経回路学会
研究室名
理論生命科学研究室
研究室
ウェブサイト

https://www.nishiyamayuta.com/

メールアドレス
y-nishiyama(at)kjs.nagaokaut.ac.jp

外部を感じさせるインタフェースの構築

「親王はなにかを求めて、ひたすら足をうごかしていた。…なにをさがしているのか、自分でもよく分からないようなところがあった。…その一方では、…さがしているものはすべて、あらかじめ分かっているような気がするのも事実であった。…ああ、やっぱりそうだったのか。すべてはこの一言の中に吸収されてしまいそうな予感がした。」(高岡親王航海記、p.137)

「分かる」と「分からない」を同時に感じつつなんとか歩を進めることで、外部(=知り得ぬ世界)に対する反応に備える。しかしこのような無目的で能動的な活動を意識的に持続することは忍耐を要する。ではこれを補助するインタフェースをつくるにはどうするか。私たちは両義的な状態を生成するメカニズムに注目している。

「わたしの身体である」と感じることを身体所有感という。自身の身体に所有感を感じることは当たり前に思えるが、視覚、触覚、固有感覚など複数の感覚が同期していれば手の模型やVRの仮想身体に所有感を感じることもできる。しかしこれだけなら、所有感が冗長であることを示しただけだ。これに対し私たちは、身体所有感が「わたしの手であり」かつ「わたしの手でない」という両義的な感覚であることを示してきた。
視触覚の同期によりゴムの手に所有感を感じる実験がある。主観報告を詳しくみると、対照条件でさえ所有感を感じる被験者がおり、統制質問でさえ条件間に有意な差がみつかる。私たちはこれら心理学的結果が脳・身体を横断する複数の生体信号間の統合度と関連があることを示し、両義的所有感を生理心理学的に明らかにした(図1)。別の実験では、自身の身体でありながら自身のものでないように感じる、身体非所有感が引き起こされる(図2)。この実験では、心理学的証拠に加えて、被験者は当該部位の痛みに対して敏感になること、皮膚温度が高くなることなど、生理学的証拠も得られている。

以上の身体認識と同様、群れも両義性をもつ。動物の群れ(図3)から着想を得た「互いに動きを読み合う」という相互予期メカニズムは、個体の自由な振る舞いと群れのまとまりの両立を実現する。このメカニズムがヒトの群れ形成に寄与することを示した共同研究(リーダーは京工繊大の村上久)は2021年度イグ・ノーベル賞を受賞した(図4)。イグ・ノーベル賞は表面的な理解を笑いながらも、それに飽き足らず考えることを促し認識の外部を気づかせる装置であり、私たちの研究もまたそのようなインタフェースとして機能したのかもしれない。

私たちの研究は、経験を担うはずの観測者がその行為の目的や理由に追われて新たな経験ができないような状態を防ぐための技術に関する科学(=技学)でありつづける。

図1
図2
図3
図4
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